書評:もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

おもしろかった。あと、やる気をもらった。

高校野球の女子マネージャーが、ドラッカーの「マネジメント」を参考書にして、公立進学校の平凡な野球部を甲子園に出場させるべく計画、立案、行動するというお話。
はじめは、この平凡な野球部に甲子園出場がいかに無理過ぎて無意味な目標であるかが、あくまでもリアルに、説得力豊かに描写される。
甲子園出場枠をめぐる競争がいかに激しくて自分たちの実力はそこからどれくらい遠いとか、みんな勉強もしなくちゃで甲子園なんて本気で目指す気もそもそもないとか。ここまでは普通。そりゃあ目標が困難で、高い山を登っているということを読者に分からせないと、そのあとの話が面白くならないですからね。当然の前振りです。でも、この話ほんとにこの後大丈夫か?ここから甲子園レベルに持って行くのって、偶然おこった幸運に頼ったりとか、荒唐無稽になってしまうんじゃないの?と心配になってしまいました。
ところが、その前振りのリアルさと説得力を保ったままで(ここがすごい!)、甲子園、こんな経緯をたどったら実際行ける可能性あるんじゃないか?と読む人(というか僕)に思わせるところまで持って行くのですよ、このお話は!!もちろん女子マネージャー一人の力でやるのではありません。まわりの人たちの持つリソースを巻き込んで実現するのです。だからこそ説得力が出てくるわけです。
引田天功が、手錠もかけますよ、鎖でがんじがらめですよ、箱に入って釘打っちゃいますよ、と見せといて、それでもなぜか脱出成功してしまう、そんな感じですね。
そんな話ですので、読むと、よし、オレもいっちょやってやるぜ的なハイな気分になれますよ。

著者はブログ「ハックルベリーに会いに行く」で有名なid:aurelianoさんです。
AKB48というアイドルグループのプロデュースを手がけられたそうですが、この本に登場する女の子たちの性格はAKB48の女の子たちをモデルに書いたそうです。ちょっとドキドキしちゃいますね。

「金くれ」にインスパイアされて「くれパル」を作りました

少し前に「金くれ」にインスパイアされて、友達と組んで、簡単寄付・募金システム「くれパル」をリリースしました。ペイパルで募金できる「金くれ」みたいなものです。いくらお金が集まったのかも記録、表示されます。
僕が「金くれ」を発見したのは確か、@yuisekiさんのtwitterでのつぶやきからでした。
生活に困っている人だとか、何か面白いことをやろうとしているだとか、色々な人がいて、これはストレートで面白いな、と思いました。
たくさん並んでいる中からいい理由を持っていると思う人を自分の判断で見つけて、お金を上げる、というのは自分の意志というか考え方を表明しているようで、いいな、とも思いました。そして実際に何人か、お金をあげたいな、と思う人たちを見つけることもできました。
でも結局あげませんでした。なぜかというと、銀行振り込みとかするのがめんどくさいから。

きっと僕のように、お金あげてもいいな、と思いつつも、めんどくさくて結局あげない、という人は結構いて、だからここでお金を募っても実際にはそんなに集まらないんじゃないかなと思いました。

それならば、そのめんどくさささえ取り除いてあげれば、お金を欲しがっている人にもっとお金が集まるシステムが作れるのではないか、と思ったのです。ペイパルだったらお金をくれる人たちはクレジットカードか、(持っていれば)ペイパルのアカウントで簡単にお金を払えるので、めんどくささを大幅に軽減することができます。

さて、実際に作って公開してみると、お金をくれる人が実際にお金をくれる、という段階に行く前に、お金が欲しいという人が集まらないといけないわけですが、今ここでコケています。
そこでこんなブログエントリなど書いて、お金が欲しい人が集まってくれないかな、と思っているわけです。

友達に見せると、励ましてもらったり、サーバー代をもらったりもしましたが、冷たくされたり、「おまえバカじゃないの」的な反応をもらうこともあります。
「くれパル」で一体何がしたいのか、なぜ僕が「金くれ」や「くれパル」のアイデアに魅せられているのか、ちょっとお話しましょう。

  • 人が社会と関わる形はもっと多様でいい

人間は社会につながってしか生きていくことはできません。例えば焼き肉を食べに行くにも、牛一頭を育てて肉にして焼いておいしく食べられるようにするなんて、一人じゃ無理なわけです。しかも一人3000円とかのコストでやる、なんて全然無理でしょう。社会というものがあるおかげで、そんな安い値段でおいしい焼き肉が食べられるわけです。
しかしこのサラリーマンが圧倒的な世の中で、多くの人の社会との関わり方は「勤務先の会社をとおして」と「消費者として」くらいに限定されてしまっていないでしょうか?
そこにはあまり個人が自分の意志や個性を出せる余地がないと思うし、みんなが同じような形で社会にぶら下がっているのはつまらない。もっと多くの人がもっとダイレクトに個性的なやり方で世の中に関わったほうが面白いんじゃないでしょうか。
例えば、近頃話題のニート@phaさんなんて、会社で働くとかはしていなくて、人からお金をもらったり、おごってもらったり、プレゼントをもらったりして結構楽しく生活しているそうですが、彼が世の中からもらうばかりで何も返していないかというと、そういうわけではなくて、彼はネットをとおして自分自身をコンテンツとして提供、発信して世の中を楽しませ、その報酬をダイレクトに得ているということだと思います。
彼の世の中との関わり方は一例ですが、そんなちょっと変わった生き方をする人たちが世の中からダイレクトに報酬を得るためのシステムがつくれたら、もっと面白い世の中になると思います。

最近勝間和代さん「やればできる」を読んだのですが、ある程度人が世の中で成長して「とんがり力」がついてくると、ドラゴンボールの「元気玉」のように、周りの人たちの力を少しずつ分けてもらって、大きな力を出すことができるようになる、ということが書いてありました。
みんなのパワーを分けてもらって、「元気玉」を撃ち、一人ではできないようなことを実現する、というイメージ。
これがそこらじゅうで多発したら、かなり面白いのではないでしょうか。
まだあまり「とんがり力」のない人でも、誰でも面白いアイデアとやる気を持っていれば、みんなのパワー(お金)が集まってきて、それが実現される。
「くれパル」がそんな元気玉を撃つ銃として機能したらいいなと思っています。

というわけで、実現したいことがある人も、生活に困っている人も、さあどうぞ!
僕自身も、まずはトータル10000円くらい寄付したいなと思っているのに寄付先がないぞって感じなので、狙い目ですよ。

人生で大事なことは「カタンの開拓者たち」(ボードゲーム)から学んだ

これは世の中の縮図のようなゲームだ。このゲームの達人は人生の達人といえるかも。

無人島に開拓者が入って、島から収穫できるリソース(材木、石材、羊、など)を元手に、街や道を作って覇権を争うというゲームなんだけど、これがまた深みのあるゲームなのですよ。

このゲームの本質を一言で言えば、投資とリターンのゲームです。近頃思うに、「投資」という行為は人生のどんな場面においても重要で、例えば本を買って読むのも自分への投資だし、仕事に役立つ知識を勉強するのも、ガジェットを買って暮らしに役立てるのも、人に会いに行くのも、よいサービスを体験してみるのも、ブログを書くのも、お金や時間といったリソースを投資して長期的なリターンを期待する、という行為だと言えます。なにも株を買うだけが投資ではないわけです。

僕は投資に関しては、狭い意味でも広い意味でもまだまだアマチャンだと思いますが、そんな僕の投資経験から見てではありますが、「カタンの開拓者たち」は投資の本質を鋭く突いたゲームのようにみえます。ボードとカードとサイコロで、これだけのゲームが設計できる、ということには感心しました。

投資に関しては、本がたくさん出されているので、それを読めば様々な教訓が得られるわけですが、本を読むだけでは、それらの教訓を「体で理解する」ことは不可能ではないでしょうか?ところが「カタンの開拓者たち」をプレイすれば、そういった教訓を体感することができます。以下、このゲームをプレイすることによって体感できる教訓をいくつか。

  • 教訓1:まず投資しないとリターンは得られない!

材木や石材を投資して、道や街をつくると、そこから新たに材木や石材がリターンとして上がってきます。当たり前ですが、まず最初に身銭を切って投資しないと、決して、リターンは得られません。

  • 教訓2:投資の結果、上がるリターンは確率変数である!

道や街をつくったからといって、材木や石材のリターンが約束されているわけではありません。サイコロを振って、当たりにならないとリターンはなしです。当たりの確率は土地によって違います。リターンのよく上がる優良物件や、そうでない物件があります。確実にリターンが得られる投資なんてものはないけれど、よりよい確率でリターンが得られる優良な土地へと道を延ばして街を作っていくわけです。

  • 教訓3:モノの価値は市場原理で決まる!

なんと市場原理がゲームにとりいれられています。自分の持っているリソースを交渉が成立するレートで、他人のリソースとトレードすることができるのです。(例:材木3枚と石材1枚を交換)こうなると、稀少で、みんなが欲しがるリソースの値段はつり上がり、そのへんにあふれているリソースは安く買いたたかれます。

  • 教訓4:複利効果を甘く見るべからず!

最初のうちにうまく投資できたプレーヤーは投資で得たリソースを、さらに投資に回すことができるので、雪だるま式に金持ちになっていきます。ゲームが進む内に、最初でコケたプレーヤーとの格差が挽回不可能なまでに進む感じは、まるで現実の世界のようです。

友達で集まってプレイしてみたら、ボコボコにされました。きっと僕の生き様がアマいということでしょう。次は勝ちます!

P.S. このゲームを教えてくれたがりゅうさん、ありがとう!

雪の峠・剣の舞

寄生獣」で有名な岩明均先生の歴史物。
ちょっと前にある友達から別の友達に、「返しといて」といわれて渡されたのを役得として勝手に読ませてもらった。


雪の峠

これは示唆に飛んだ良い作品。シブイ大人の漫画だね。今の時代の若者へのメッセージなのかも。
関ヶ原の合戦前後の戦国から太平の世への過渡期を舞台に、「古き良き」戦国の時代の考え方から脱却できない/したくない老臣たちと、新しい時代での繁栄を目指す佐竹家の若き君主義宣と渋江内膳をはじめとするその若き側近たちの静かなる頭脳戦を描く。
老臣の中にもいろいろいる。
「近頃の若者は軟弱でなっとらん!」といった強硬派。
若い側近たちに理があると理解しながらも、ただ「戦」をしてみたいという欲求からこの戦いに引き込まれ、はからずも老臣側のリーダーになっていく老策士。
影で若者たちにアドバイスを送るものも。

そして第一ラウンドは経験に勝る老臣側の完全勝利。

意気消沈する若い側近たちに、親若者派の老臣が声をかける。
「おまえらのはただの説明だったが、老臣共は戦をしておったぞ。」
この言葉で内膳たちは第2ラウンドを挑むことを決意するが。。

なぜこれが僕の心を捉えたのか考えてみると、それは多分、こんな物語が読みたかったから。

  • 世代間のプライドのぶつかり合いや理解し合えないところをリアルに描いた戦いの物語。
  • 単純にイイモノと悪者に描き分けないリアルな人間同士の戦いの物語。
  • 信長や秀吉や家康のように一番にはなれなくても、それを認めて「配られたカードで戦う」リアルな人々の物語。

そういうの読みたいリアル志向な人にはおすすめです。

剣の舞

雪の峠と一緒に入ってるお話。戦乱に翻弄された切ない恋物語ってところですか。これもいい味出してます。

メモ:Snow Leopard上でLeopardで動くバイナリをビルドするには

g++のオプションに以下を入れてビルドすればよい。(もちろんSnow LeopardのCDからXCode Toolsをインストールしたあとで。)

-arch i386 -isysroot /Developer/SDKs/MacOSX10.5.sdk -mmacosx-version-min=10.5

もし、以下のようなエラーが出たら、ライブラリのarchitectureが合っていない。

ld: warning: in libXXX.dylib, file is not of required architecture

architecureを確認するには、

file libXXX.dylib

その結果、

libXXX.dylib: Mach-O 64-bit executable x86_64

と出たら、64bitでビルドされているということなので、32bit(-arch i386)か、64bitと32bitのUniversal binary(-arch i386 -arch x86_64を同時に指定)でリビルドする必要がある。

Macportsで入れたライブラリだったら、

sudo port install libXXX +universal

というように+universalを指定すると多くのライブラリでUniversalでビルドしてくれる。

さらにそのライブラリにdependencyがある場合は、入っているものを全部uninstallしてからやりなおす必要があるかも。

sudo port -f uninstall installed
sudo port install libXXX +universal
g++ -arch i386 -isysroot /Developer/SDKs/MacOSX10.5.sdk -mmacosx-version-min=10.5 ...

参考:http://cocoawithlove.com/2009/09/building-for-earlier-os-versions-in.html

辞書にも載っていない意味不明な英語表現を確実に調べる方法

英語のウェブを徘徊していると、辞書にも載っていないような意味不明の英語表現に出くわすことがあります。

以前の僕は、こういうのは英語ネイティブの彼女/彼氏でもいる人以外は、なんだかよくわからないままにしておくしか仕方ないものなんだろうな、と思っていました。
が、今やインターネットのおかげで、辞書に載っていない表現だって調べることはできるのです。

第一段階

まずは辞書で引く
ブラウザから直接辞書引きできるようにしておくと便利です。
Mac/Firefox使いはDictionaryFoxどうぞ。

第二段階

urbandictionary.comで検索
辞書に載っていないときは、新しめのスラングである可能性が高いです。
urbandictionary.comはユーザーによるスラングの定義が蓄積しているサイトです。
ジョークが交えてあったりするので、あまり真に受けるとマズそうなときもありますが、空気を読むようにすればここで大概のスラングに関する疑問は解決するでしょう。
Firefox使いはurbandictionary pluginを入れておきましょう。

第三段階

wordreference.comでネイティブに聞く
wordreference.comは言葉に関する疑問を質問し合うサイトです。質問は英語のことについてのみならず、日本語、フランス語、イタリア語など、様々な言語のコーナーがあります。
第二段階のurbandictionary.comでも分からないような表現は、ここのEnglish Onlyフォーラムで、英語で質問してみましょう。
だいたい20分くらいで優しいネイティブの人が答えてくれるようです。

質問する前に、既出かどうかを調べるために、Firefox使いは、wordreference pluginを入れておきましょう。

最近、シュワルツェネッガー知事の手紙にあった、kick the can down the alley という表現が分からなかったときに質問したスレッドがこれです。「問題を先送りする」という意味だそうです。丁寧に答えてもらって、ありがたいです。

ときどきは日本語の質問に答えて恩返しをするとよいかもしれません。(僕もまだやってません。ごめんなさい。)

P.S. 恩返ししてみました。http://forum.wordreference.com/showthread.php?t=1595666

藤子・F・不二雄SF短編集、藤子・F・不二雄異色短編集

ビックリした。あの子供向け漫画の藤子・F・不二雄先生が人間や世界に対してこれほど深く掘り下げて考えていたなんて。。

でも、驚くようなことでもないか。こういうしっかりしたバックボーンがあるからドラえもんとか描けたんだろうな。
オバQのあとしばらくヒットがなかった藤子・F・不二雄が気分を換えて、大人向けSF漫画を描いてみたという時期の作品集。
この作品群のあとに、ドラえもんが生まれることになる。

以下、お気に入りのエピソード。
「気楽に殺ろうよ」
価値観の違う世界に飛ばされてしまった主人公。
「ウルトラ・スーパー・デラックスマン
無敵の力を手に入れて、正義の味方になったのだが。。
「ヒョンヒョロ」
絶対的な力。人間の価値観の脆弱さ。
ミノタウロスの皿」
これも価値観がキーワード。
「ノスタル爺」
これは切ない。。
「どことなくなんとなく」
マトリックスを思わせる。
「いけにえ」
自分より優れた知的生命体の考えることは、所詮理解することは出来ない。
「夢カメラ」
心の中は治外法権

全部なんだかテーマというか「おまえら、これに気づけよ!」的なメッセージがあって深いのですよ。
正義の危険性。
善悪、道徳、価値観、常識の理論的な脆さ。
絶対的な力の前にはなすすべがないという現実。
高齢化社会の抱える問題。

全部、40年後の今語っても全然古くさくない。それどころか、まさに今この時代に語られるべきテーマじゃないだろうか。

僕は、これらの作品を通して垣間見える、作者の物事に向き合う姿勢が好きなのです。
人間は信じたいと思うものを実際に信じてしまうものだというが、その欲望に負けず、現実をゼロベースで見て受け入れる、という姿勢。
身も蓋もない結論に落ち着くこともあるけれど、自由。