その数学が戦略を決める

大量のデータの統計分析が、人間の職人的カンを打ち負かしつつあり、産業革命時の馬と蒸気機関者が競争していた状況が再来している、という趣旨の啓蒙書。

グーグルも、チェスでカスパロフを負かしたディープブルーも、そんな大きな潮流の氷山の一角、ということ。で、人間はどうすればいいのかというと、そんなコンピューターを道具として使い、コンピューターが出してきた答えをもとに、仮説を導き、コンピューターへの次なる問いを考える、というように、コンピューターと人間の頭脳の間を行ったり来たりして問題解決ができるようになるべし、とのこと。(グーグルで言えば、一発目の検索結果をふまえて、二発、三発目の検索のうまいキーワードを考える力、といったところだろうか。)
興味深い話のつまったいい本なのだが、一つ残念な点が。この本の主題、Super crunchingが「絶対計算」と訳されているのだが、これはちょっと変な訳だと思う。おかげで、何か特別なアルゴリズムでもあるのかとしばらく誤解しながら読んでいた。題名も同様の誤解を招きそう。というか僕は誤解していた。実際は絶対計算と呼んでいるのは、特定のアルゴリズムのことではなくて、コンピュータによる大規模な統計解析をそう総称しているということのようだ。(Crunchingは英語で、コンピューターに大量のデータを処理させる、という意味を持つ。それにSuperをつけただけの言葉。「大規模計算」とかでいいのに、と思った。)