読書:考える脳考えるコンピューター

パームの創始者が脳の仕組みについての自説を語った本だ。

こいつはすごい。いままで自分の脳を使ってきた経験から、ああ、それは正しいかもな、と思わせる説得力がある。脳の仕組み的なことを書いた本は何冊か読んできたが、「この場所は数学的思考で、この場所は言語」とかの分類学的な話で終わってしまっていたり、なんか宗教的に一人で盛り上がってるだけで何も意味のあることを言ってないなという感想を抱いたりするくらいが関の山だった。だから、ああ、脳のことっていうのはまだ誰もそれくらいしか分かっていないんだな、という結論を自分の中で出していた。

でも、この本は違う。脳をエミュレートする機械を本気で作るつもりになったら解かなければならないであろう具体的な問題にちゃんと答えようとしている。
読み進めていると、そこにまさに書かれている仕組みで自分がこの本を読み進めているという、自己言及的な、なんとも不思議な気分が味わえる。

思うに、これを論文にしないで一般書で出しているのは、「根拠はないけど多分こうだと思う」といった科学的根拠に基づかないオレオレ理論の部分が多分にあって、主張をデータで立証することが大事な論文という形式で出すのはふさわしくないところがあるからなんだろう。(まちがってたらごめんなさい。)でも脳の仕組みのような巨大なパズルを解くには、科学的に証明はできなくてもそれらしい直感や仮説からトップダウンに問題を解いていくアプローチも必要だろう。
著者自身、この辺のトレードオフについては意識しているようで、直感に頼った科学者がその直感に詐がれたことが歴史上何度もあったということもさりげなく述べている。

僕も以前、オレオレ脳理論を考えたりしてみたが、いやさすが、僕のより全然考えが深いです。でも自分なりにこういうこと考えるのは楽しいのでこれからもオレオレ脳理論は考え続けると思う。