ヘリウム3は宇宙時代を開くのか

プラネテスMOONLIGHT MILEといった物語のベースになっている核融合燃料ヘリウム3。
果たしてヘリウム3を求めて人類が宇宙に羽ばたく近未来はありうるのでしょうか?

ということで調べてみた。(ググっただけですけどね。)
結論から言うと、なさそうです。残念。

以下、なさそうな理由を説明します。
まず、核融合には3つの種類があることを理解せねばなりません。

核融合その1:D-D反応

二つの重水素(陽子一個と中性子一個)を反応させて、三重水素(陽子1個と中性子2個)と陽子、またはヘリウム3(陽子2個と中性子1個)と中性子を生成する反応。
重水素は海水の中に普通に存在していて、取り出し可能。
海水1リットルから、石油76リットル分のエネルギーが出せる夢の核融合。ちょっと計算してみたら、今のペースならこれができれば100億年はエネルギーの心配をしなくていい。
100億年なんていったら、人類の歴史どころか、地球の全歴史(46億年)の倍くらいの長さだ。そんな先には人類は人類とも呼べないような未来生物に進化しているだろうし(絶滅していなければ)、その前に50億年先には太陽が寿命を迎えるらしい。つまり、これが出来たら未来永劫エネルギーの心配は一切しなくてよし、ということだ。
でも実現に必要な温度などの条件をクリアするのは技術的にかなり難しい。

核融合その2:D-T反応

重水素(陽子1個と中性子1個)と、三重水素(陽子一個と中性子2個)が、ヘリウム(陽子2個と中性子2個)と余った中性子一個に化ける反応。
反応の条件は3種類の中でもっとも低く、一番実現可能性が高い。
三重水素は地球上に極微量にしか存在しない、というのがネックのように見えるが、実は三重水素は海水中に存在するリチウムから作ることができる。(D-T反応が出す中性子をリチウムにぶつけてつくる。だから種火さえ点火できればあとはOKというわけ。)
これだと海水1リットルから石油1リットル分のエネルギーが出る。これだと1億年くらい大丈夫ってことになる。一億年前は白亜紀で、恐竜の全盛期だった。やはりエネルギーの心配は金輪際必要なくなる。

核融合その3:ヘリウム3を使った反応

さて、われらがヘリウム3を使った核融合重水素とヘリウム3が、ヘリウム4(普通のヘリウム)と陽子になる反応。
これのいいところは、エネルギーをもって飛び出す粒子が荷電粒子である陽子なこと(中性子と違って、磁場で閉じこめられるし、水を沸騰させてタービンを回して発電しなくても直接電力に変換可能。)だそうだ。
で、肝心の実現可能性だが、Wikipediaによれば、D-D反応よりは簡単だが、D-T反応よりは難しい。こっちのページにはさらに違うことが書いてあって、D-D反応よりもさらに難しいだって。
どっちが本当か知らないが、少なくともD-T反応よりも難しいのは確かだろう。

結論

一番実現しやすいD-T反応だけでも1億年は食えるのに、食いにくいヘリウム3を求めて人類が宇宙に進出するシナリオは、残念ながらないといってよさそうだ。

P.S.
京大のページでは、ヘリウム3は「主な核融合」のリストに入ってもいませんね。
http://p-grp.nucleng.kyoto-u.ac.jp/fusion/words.html#pB
うーむ。人によって、言ってることが微妙に違うなあ。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa26505.html

P.P.S.
計算が一桁間違ってた!修正しました。
D-D反応で食える年数=1.4x10^18(立方メートル 地球上の水の量)X 76(石油換算体積比) X 0.9(トン/立方メートル 比重) ÷ 1x10^10(トン 石油換算の世界のエネルギー消費)
=だいたい100億年