藤子・F・不二雄SF短編集、藤子・F・不二雄異色短編集

ビックリした。あの子供向け漫画の藤子・F・不二雄先生が人間や世界に対してこれほど深く掘り下げて考えていたなんて。。

でも、驚くようなことでもないか。こういうしっかりしたバックボーンがあるからドラえもんとか描けたんだろうな。
オバQのあとしばらくヒットがなかった藤子・F・不二雄が気分を換えて、大人向けSF漫画を描いてみたという時期の作品集。
この作品群のあとに、ドラえもんが生まれることになる。

以下、お気に入りのエピソード。
「気楽に殺ろうよ」
価値観の違う世界に飛ばされてしまった主人公。
「ウルトラ・スーパー・デラックスマン
無敵の力を手に入れて、正義の味方になったのだが。。
「ヒョンヒョロ」
絶対的な力。人間の価値観の脆弱さ。
ミノタウロスの皿」
これも価値観がキーワード。
「ノスタル爺」
これは切ない。。
「どことなくなんとなく」
マトリックスを思わせる。
「いけにえ」
自分より優れた知的生命体の考えることは、所詮理解することは出来ない。
「夢カメラ」
心の中は治外法権

全部なんだかテーマというか「おまえら、これに気づけよ!」的なメッセージがあって深いのですよ。
正義の危険性。
善悪、道徳、価値観、常識の理論的な脆さ。
絶対的な力の前にはなすすべがないという現実。
高齢化社会の抱える問題。

全部、40年後の今語っても全然古くさくない。それどころか、まさに今この時代に語られるべきテーマじゃないだろうか。

僕は、これらの作品を通して垣間見える、作者の物事に向き合う姿勢が好きなのです。
人間は信じたいと思うものを実際に信じてしまうものだというが、その欲望に負けず、現実をゼロベースで見て受け入れる、という姿勢。
身も蓋もない結論に落ち着くこともあるけれど、自由。